香料の製造は、専門的な知識や設備を必要とするため、
プロの調香師が手がけることが多いですが、
素人でも自宅で香料や香水を作ることは可能です。

以下では、素人が自宅で香料や香水を製造するためのステップを、
初心者向けにわかりやすく説明します。

1. 香りを作るための基礎知識を学ぶ

まず、香りの作り方に関する基本的な知識を身につけることが重要です。
香料の世界には、香りの構成やバランス、香りの「ノート」などの概念があります。

1.1 香りの「ノート」を理解する

香水は、一般的に3つの香りの層（ノート）で構成されています。

• トップノート
  香水をつけてから最初に感じる香り（持続時間：10〜30分）
• ミドルノート（ハートノート）
  香水の核となる香り（持続時間：1〜3時間）
• ベースノート
  香りが持続する部分で、残り香を決定する（持続時間：3〜5時間）

この3つの香りの層を組み合わせて、バランスの取れた香水を作ります。

1.2 基本的な香りの分類

香りは、以下のようなカテゴリーに分けられます。
これを理解することで、どんな香りを組み合わせるか決めやすくなります。

• シトラス系
  レモン、オレンジ、グレープフルーツなどの柑橘系の香り
• フローラル系
  ローズ、ジャスミン、ラベンダーなどの花の香り
• ウッディ系
  サンダルウッド、シダーウッドなどの木の香り
• スパイシー系
  シナモン、クローブなどのスパイスの香り
• オリエンタル系
  バニラ、アンバー、ムスクなど、濃厚で甘い香り

2. 必要な材料と道具を準備する

自宅で香料や香水を作るためには、
以下の材料と道具を用意する必要があります。

2.1 材料

✓エッセンシャルオイル（精油）

香りの主成分となる植物由来のオイルです。
香水作りにはシトラス系、フローラル系、ウッディ系などの
複数の種類を準備すると良いです。

例
ローズオイル、ラベンダーオイル、レモングラスオイル、
シダーウッドオイルなど

✓キャリアオイル

エッセンシャルオイルを薄めるためのベースオイルです。
肌に直接エッセンシャルオイルをつけると刺激が強すぎるため、
キャリアオイルで希釈します。

例
ホホバオイル、グレープシードオイル、アーモンドオイルなど

✓アルコール

エタノールなど、高濃度のアルコールは香水の基材としてよく使われます。
香りを均一に拡散させるため、無水エタノールなどを使います。

✓蒸留水

アルコールと一緒に使用することで、香水の持続力を調整します。

2.2 道具

• スポイト
  エッセンシャルオイルを正確に計量して調合するために使用します。
• ビーカーまたは小さな計量カップ
  正確にアルコールやオイルを量るために使います。
• 遮光性の瓶
  エッセンシャルオイルは光に弱いため、保存には遮光性の瓶が必要です。
• 攪拌棒
  オイルやアルコールを混ぜるために使います。
• 小さな香水瓶
  完成した香水を入れるための瓶。スプレータイプのものも良いですが、
  ロールオンタイプの瓶も手軽です。

3. 香水の作り方

3.1 香水の基本配合

初心者向けにシンプルな香水のレシピを紹介します。
以下は、50mlの香水を作る場合の配合例です。

✓エタノール（無水アルコール）

　35〜40ml（全体の70〜80%）

✓エッセンシャルオイル

　約5〜10ml（全体の10〜20%）

トップノート、ミドルノート、ベースノートのバランスを考えて配合します。

　　トップノート
　　　50〜60%（例：ベルガモット、レモン）

　　ミドルノート
　　　30〜40%（例：ラベンダー、ローズ）

　　ベースノート
　　　10〜20%（例：サンダルウッド、バニラ）

✓蒸留水

　10ml（全体の10〜20%）

3.2 ステップ

✓計量・調合
　ビーカーやスポイトを使って、エタノールを正確に量り取り、
　そこにエッセンシャルオイルを少しずつ加えていきます。

　トップノートから順に混ぜると香りのバランスが取りやすくなります。

✓攪拌
　エタノールとエッセンシャルオイルが完全に混ざるように、軽く攪拌します。

✓熟成
　調合後、香水は1〜2週間程度熟成させると香りが落ち着きます。
　熟成の際は、遮光性の瓶に入れ、冷暗所で保管しましょう。

✓蒸留水の追加
　最後に、蒸留水を加えて香水の濃度を調整し、よく攪拌します。

✓瓶詰め
　完成した香水を小さな香水瓶に移して完成です。

4. オリジナル香水を作るためのコツ

4.1 試行錯誤を楽しむ

香水作りは、繊細なバランスとクリエイティブな感覚が求められるプロセスです。
最初は思うような香りが作れないかもしれませんが、
少しずつ香りの配合を変えてみて、
自分だけの香水を作り上げる楽しさを味わいましょう。

4.2 体温との相性を確認する

香水は、肌に乗せたときの体温によって香り方が変わります。

自分の肌に合った香りを探るためには、実際につけてみて
時間の経過とともに香りがどのように変化するか確認することが大切です。

4.3 メモを取る

香料の調合は複雑で、細かい分量や手順を記録しておかないと
再現が難しくなります。

どのエッセンシャルオイルをどれくらい使ったのか、
調合時の感想などをしっかりメモしておくことが、
次回以降の調香に役立ちます。

5. 簡単な香水以外の香料製品

香水以外にも、素人が作れる香料を使った製品があります。
初心者でも手軽にできるものとして、
以下のアイテムを作ってみるのもおすすめです。

5.1 練り香水（ソリッドパフューム）

練り香水は、固形の香水で、ミツロウとキャリアオイルを使って作ります。
手のひらや耳の後ろなどに軽く塗ることができ、持ち運びにも便利です。

✓材料
　ミツロウ、キャリアオイル、エッセンシャルオイル

✓作り方
　ミツロウを溶かし、キャリアオイルとエッセンシャルオイルを
　混ぜて容器に流し込み、固める。

5.2 ルームフレグランス（ディフューザー）

自宅の部屋に香りを広げるためのフレグランスも簡単に作れます。
無水エタノールやキャリアオイルを基材として、
エッセンシャルオイルをブレンドします。

6. 法的な注意点

香水の自作は趣味として楽しむ分には問題ありませんが、
もし販売を考える場合は、いくつかの法的な規制や手続きを
知っておく必要があります。

✓化粧品製造業許可　
　日本では、香水を含む化粧品を販売するには、
　厚生労働省の「化粧品製造業許可」が必要です。

✓成分表示
　販売する場合、成分表示やアレルギー物質の表示が
　義務付けられています。

自作の範囲で楽しむ場合は、これらの許可は不要ですが、
販売を視野に入れる場合は注意が必要です。

以上が、素人が香料や香水を製造するための基本的なステップです。
初めはシンプルな材料からスタートし、試行錯誤しながら、
自分だけのオリジナルの香りを作り上げる楽しみを味わってください。