こんにちは、Yakuです。
香水が80年代や90年代に比べて、より身近で日常的なアイテムとなっている背景には、
香りに対する価値観の変化があります。
香水はかつて特別な場面でのみ使われるものでしたが、
近年では「香りを纏うこと」が日常の自己表現やセルフケアの一環と
考えられるようになり、多くの人が香りの持つ力を身近に感じるようになっています。
また、柔軟剤やファブリックミストなどの普及により、
より手軽に楽しめる香りアイテムが増えたことで、
一般消費者の香りに対する関心が高まりました。
しかし、ファブリック系の香りで十分とする層がいる一方で、
香水を愛用する人たちは「衣類ではなく肌に纏う香り」に
こだわり続けているのも事実です。
香水の多様な表現力や、個性を際立たせる力が、根強い人気の理由です。
【本記事のもくじ】
- 1 香水手作りのためのプロフェッショナルガイド:基礎知識と準備
- 2 天然香料と合成香料の安全性【誤解を解く】
- 3 香水調合に必要な道具
- 4 エタノールの希釈と香水の基準濃度
- 5 香水におけるオンス表記の理由と計測方法
- 6 香りの基礎知識と構成:トップ・ミドル・ベースノート
- 7 香りの記憶とレシピ作成
- 8 香りを記憶するためのステップ:ムエットの活用と香りの表現方法
- 8.1 香りの記録方法:自身の言葉での表現
- 8.2 トップノート、ミドルノート、ベースノートの確認
- 8.3 香水のテーマ作り:香りにストーリーを与える
- 8.4 調香の成功にはテーマ設定がカギ:香水のイメージを形にするために
- 8.5 テーマ設定から始める香水作り:レシピ構築のプロセス
- 8.6 香水の調合手順(例:150滴基準でのレシピ作成)
- 8.7 希釈して完成度を高める:オー・ド・トワレ、オー・ド・パルファム、パルファム
- 8.8 調香に必要なものは、想像力とセンス
- 8.9 香りを細かく表現するには多様な香料が必要
- 8.10 調香を楽しむコツ:完璧を求めすぎない
- 8.11 調香のすすめ:自由な発想で、香りの世界を広げよう
香水手作りのためのプロフェッショナルガイド:基礎知識と準備
香水の調香に興味を持ち、手作りでチャレンジしたい方にとって、
基本的な知識と正確な準備は非常に重要です。
特にエッセンシャルオイルや合成香料の選定、安全性に関する理解は、
香水の品質や身体への影響に直結します。
プロの調香師が注意するポイントや、
準備のステップを詳しく解説していきます。
天然香料と合成香料の安全性【誤解を解く】
多くの方が「天然=安全」と考えがちですが、香水づくりではその考えは通用しません。
天然香料(エッセンシャルオイルやアブソリュート)は、
その濃度が高すぎると皮膚や身体に刺激を与えることがあります。
例えば、ペパーミント精油やユーカリ精油は、特定の人にとって刺激が
強すぎることがあり、無闇に肌に塗布することは避けるべきです。
一方、合成香料は、食品香料としても使用される場合があり、
安全基準をクリアしたもののみが市場に出回ります。
つまり、品質管理の厳しい合成香料の方が実際には「安全」であることが多いのです。
また、天然香料の採取は環境にも負荷をかけます。
ラベンダーやサンダルウッドのように、乱獲や伐採によって一部の植物資源が
危機に瀕しているケースもあり、エコ意識を持って香料を選定することも重要です。
香水調合に必要な道具
調香は精密なプロセスであり、適切な道具を用いることで、失敗を防ぎ、
クオリティの高い香水が作成できます。まずは以下の道具を揃えましょう。
- 香料
天然香料(精油やアブソリュート)と合成香料の両方をバランスよく用意します。 - 試香紙(ムエット)
香料の香りや完成品の香りを試すために必要です。
肌に直接つけずに香りを確認でき、香りの変化を把握するためにも欠かせません。 - 電子スケール
0.01g単位で計測できる精密なスケールが理想です。
特に微量の調合では誤差を最小限に抑えることが求められます。 - スポイトとシリンダー
各香料を正確に取り扱うために必須です。
香料の残留を防ぐため、可能な限り小さめのスポイトを使うとよいでしょう。 - ガラスビーカー
エタノールや精油の濃度を計算しながら調合するため、ガラス製が安全です。
エタノールの希釈と香水の基準濃度
香水には、香料とエタノールと水が必要です。
手作り香水では、薬局で購入可能な無水エタノールと精製水を用いるのが一般的です。
10%のオード・トワレを作るには、香料10gと95%エタノール90gを用意するなど、
濃度の調整がポイントです。
また、エタノールは無水状態で用いると「ツン」としたアルコール臭が強くなるため、
少量の精製水を加えることで香りが落ち着きます。
オード・トワレ、オード・パルファム、パルファムなどの香水濃度の違いについても
把握しておきましょう。
香水におけるオンス表記の理由と計測方法
香水の世界では、オンス(oz)という単位が一般的に使用されており、これは重さの単位です。
多くの方が容積(ml)と勘違いされますが、
香水におけるオンス表記は、実際には約28.35gに相当します。
目安として「1オンス=約30ml」として扱われることもありますが、
これはあくまで目安であり、エタノールと水の比重差によって多少のズレが生じます。
エタノールと精製水の容積と比重の違い
香水の基材として用いる無水エタノールと精製水は、同じ重さでも容積に差が生じるのが特徴です。
たとえば、同じ10gでも、精製水の方がエタノールよりも密度が高く、
容積がやや小さくなります。
このため、エタノール100gと水100gの容積は一致しません。
1オンスを目安にする際は、この比重の差を理解した上で、使う基材の特性に合わせた計測が必要です。
重さで計測することの利点
香水の調香において重さでの計測が多用されるのは、以下のような理由があります。
-
比重の違いを吸収
香料には、粘度や比重が異なるものが多く、特にベンゾインのように粘度が
高いものは、1滴の量が非常に多くなります。ベルガモットのような低粘度の
精油と同じ「1滴」でも実際の重さや量は異なるため、重さで計ることで
正確な配合が可能になります。 -
固体・粉末香料への対応:香料には液体だけでなく、固体や粉末も多く
存在します。たとえば、アンバーグリスやムスクのような固体香料、あるいは
粉末のような質感を持つものもあります。これらは容積では測れないため、
重さで計測する方が効率的です。
容積計測の代替としての工夫
調香を手軽に楽しみたい方や、少しの誤差を許容できる場合には、
容積(ml)での計測も可能です。ただし、比重によって誤差が出るため、
少量で香りを作り上げる場合には注意が必要です。
調香の際は、これらの計測方法を正しく使い分け、香料の特性に合わせた計測方法で
より一貫性のある香りの配合を目指しましょう。
香りの基礎知識と構成:トップ・ミドル・ベースノート
香水は一般的にトップノート、ミドルノート、ベースノートの3層から構成されます。
トップノートは最初に感じる香りで、揮発性が高くすぐに消えやすい特徴を持ちます。
ミドルノートは香水の「ハート」とも呼ばれ、トップノートの後に続き、
数時間にわたり香りを放ちます。
最後に現れるベースノートは持続性が強く、香水の深みや安定感をもたらします。
調香時には各香料の揮発性と香りの特性を考慮しながら、バランスよく配合します。
例えば、トップノートにはベルガモットやレモン、ミドルノートには
ジャスミンやローズ、ベースノートにはパチョリやサンダルウッドを
使用することが一般的です。
香りの記憶とレシピ作成
調香の際には、香りの変化を細かく記録していくことが重要です。
ムエットに滴下した香りを確認し、香りの印象を言葉で表現しながらメモしていきましょう。
自分自身の言葉で表現することで香料への理解が深まり、香りの記憶が定着します。
また、香料の特徴を明確に把握することで、調合時のミスも防げます。
香料の配置を決定し、必要に応じてトップ、ミドル、ベースのノートごとに香料を
ブレンドしていきます。1滴単位で調整することで、香りの微妙なニュアンスも
把握できるため、試作品の作成時にはこの方法を活用しましょう。
具体的なレシピと実践
調香初心者は、扱いやすいように150滴単位でレシピを組むことが一般的です。
1,000滴基準のレシピを基本とするプロ仕様と異なり、少量から調合を試みることで
負担を減らしながら香りのバランスを試すことができます。
試作を繰り返すことで、理想の香りに近づけていきましょう。
例として、トップノート、ミドルノート、ベースノートのバランスを取りながら
次のような試作品のレシピが考えられます。
香料A:40滴
香料B:20滴
香料C:10滴
香料D:80滴
完成したレシピは、最後に原液で調合し、濃度を調整して本格的な香水を作成します。
精油や香料の原液使用がもたらすリスク
精油や香料を使用して手作りの香水を楽しむ方が最も失敗しやすいのが、
原液で計算してブレンドを行ってしまうことです。
精油は非常に濃縮されたエッセンスであり、原液のままでは香りの良さを
正しく把握することが難しく、予期せぬ強さや刺激を持つことがあります。
濃厚な精油は一度加えると量を減らすことが難しいため、調香は「足し算」でしか調整できません。
例えば、強い香りが出過ぎた場合に別の香料を大量に加えなければならず、
バランスが崩れやすくなります。
このため、事前に香料を希釈してから使用することが必須です。
香りを記憶するためのステップ:ムエットの活用と香りの表現方法
調香の工程で重要なのが、香料をただ揃えるだけでなく、
その香りを自分自身の言葉で記憶することです。
これは香りの個性を深く理解し、適切に使いこなすための
基本でもあります。
ムエット(試香紙)を使い、香料の香りを嗅ぎながら
丁寧に特徴をメモしていきましょう。
香りの記録方法:自身の言葉での表現
香りの印象は人によって異なるため、プロの調香師も自分だけの言葉で香りを表現します。
たとえば、ある香料が「甘い」場合、「蜂蜜のような甘さ」なのか、
「バニラのような甘さ」なのか、細かいニュアンスを見つけ出し、
それを具体的な言葉で表現することが大切です。
この表現が、香りの組み合わせや新しい香水を生み出す際の頼りとなります。
普段、香りに対する表現が「いい匂い」「くさい」だけの方でも、
「ウッディでスモーキー」「酸味のあるフルーティーさ」「柔らかなフローラル」といった具合に、
修飾語をつけて記憶すると、香りのカテゴリが整理され記憶に残りやすくなります。
トップノート、ミドルノート、ベースノートの確認
香りの記録と同時に、その香料がどのノートに適しているかも把握しておきましょう。
香水はトップ、ミドル、ベースの各ノートが時間の経過とともに
香りを変化させる構成になっています。
- トップノート
最初に香る軽めの香料(柑橘系など) - ミドルノート
香水の主となる香りで、長時間持続する(フローラルやハーブ系) - ベースノート
最後に残る重厚で長持ちする香り(ムスク、ウッディ系)
ムエットに滴下して香りの持続時間を確認し、どのノートに最適か、
残香性をチェックしながら判断していきます。
香水のテーマ作り:香りにストーリーを与える
香料が頭に入り始めたら、次に香水全体のテーマやコンセプトを考えます。
テーマがあることで、どの香料を使い、どのように組み合わせるかが決まるため、
調香がスムーズになります。たとえば「爽やかな朝の草原」をテーマにするなら、
トップノートにグリーン系や柑橘系、ミドルノートにフローラル系、
ベースノートにウッディ系を入れて、イメージ通りの香りを目指すと良いでしょう。
香りのテーマは、絵画や音楽と同じように、「何を伝えたいか」
「どのようなシーンを想像させたいか」に基づいて自由に考えられます。
この「香りにストーリーを与える」プロセスが、調香の楽しさのひとつでもあります。
調香の成功にはテーマ設定がカギ:香水のイメージを形にするために
香水作りで最も重要なプロセスの一つが、「何を作るのか」を明確にすることです。
調香におけるテーマ設定は、料理のレシピ作成と似ています。
たとえば焼きそばを作るつもりであれば、使用する素材や調味料も焼きそばに
適したものを選ぶでしょう。
同じように、調香においても「香りの完成形」を先にイメージしておくことが、
素材選びや配合の調整を成功に導きます。
テーマ設定から始める香水作り:レシピ構築のプロセス
テーマが決まったら、次は具体的なレシピの作成に移ります。
使用する香料の選択と、各ノートに応じた配分を考え、
トップノート、ミドルノート、ベースノートの割合をテーマに沿って組み立てます。
これは、香りの最初の印象から徐々に香りが変化する様子を構築する工程です。
香水の調合手順(例:150滴基準でのレシピ作成)
具体的な配合の例
以下の表は、調香の過程で試作を重ねながら完成に至った例です。各試作ごとに香りのバランスを見直し、使用量を変えていきます。
香料名 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 完成 |
---|---|---|---|---|---|
A | 20 | 10 | 5 | 15 | 20 |
B | 10 | 20 | 10 | 15 | 5 |
C | 5 | 5 | 20 | 5 | 10 |
D | 40 | 30 | 20 | 10 | 30 |
E | 15 | 20 | 25 | 30 | 15 |
F | 10 | 20 | 20 | 25 | 25 |
G | 4 | 6 | 6 | 6 | 6 |
H | 3 | 3 | 8 | 8 | 4 |
I | 2 | 2 | 2 | 4 | 4 |
J | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
K | 5 | 5 | 5 | 1 | 3 |
L | 5 | 3 | 3 | 5 | 3 |
M | 10 | 5 | 10 | 10 | 8 |
N | 20 | 20 | 15 | 15 | 16 |
合計 | 150滴 | 150滴 | 150滴 | 150滴 | 150滴 |
150滴基準での配合のメリット
この方法で完成した試作品は、約3mlのオー・ド・トワレ相当の香水となります。これにより、仕上がりの香りをしっかりと確認することができ、気に入ったレシピは原液で再現可能です。また、3mlの試作品は香水の調整が簡単で、量の無駄もなく最終調整に役立ちます。
希釈して完成度を高める:オー・ド・トワレ、オー・ド・パルファム、パルファム
上記レシピで原液を使って調香すれば、次のように濃度を調整して香水の種類ごとに希釈できます。
- 10%でオー・ド・トワレ
30ml - 15%でオー・ド・パルファム
20ml - 20%でパルファム
15ml